早生まれは本当に不利? 日本とイングランドのプロ選手約1万4千人の誕生月で確かめてみた
「4月生まれはスポーツで有利、早生まれ(1〜3月生まれ)は不利」――よく聞く話です。星の巡りではなく、学年の区切りが原因だと言われています。今回は、日本のプロ野球・サッカー・五輪の選手約8,600人と、イングランドのサッカー選手約5,600人の誕生月で確かめてみました。ついでに「選手には○○座が多い?」も、同じ方法で調べています。
どうやって確かめたか
- 選手:公開データベース Wikidata に載っている、1985〜2006年生まれの日本のプロ野球選手・サッカー選手・五輪出場選手(重複を除いて8,605人)と、イングランド生まれのサッカー選手(5,628人)
- 比べる相手:同じ生まれ年に日本(イングランド)で生まれた全員の、月ごとの出生数の割合(厚生労働省の人口動態統計、英国統計局)
- 見る数字:学年の前半に生まれた選手の割合が、全人口の割合の何倍か。日本は学年が4月に始まるので4〜9月、イングランドは9月に始まるので9〜2月を「前半」としました
結果を見る前に「どんな結果なら効果ありとするか」を先に決めて記録してから集計しています。見たあとで基準を動かさないための手順です。
結果①:日本では、4月生まれがいちばん多く、3月生まれがいちばん少ない
日本の選手のうち、4〜9月に生まれた人は60.3%。全人口では50.9%なので、約1.18倍です(差の範囲は1.16〜1.20倍)。事前に決めた基準(偶然では説明しにくい差であること、5%以上の差があること、競技が複数でそろうこと)をすべて満たしたので、「効果あり」と判定しました。
| 集団 | 人数 | 前半生まれの割合(全人口比) |
|---|---|---|
| プロ野球 | 1,936人 | 1.19倍 |
| サッカー | 5,676人 | 1.22倍 |
| 五輪 | 1,114人 | 0.98倍(差なし) |
月ごとに見ると、4月から12月、そして3月へ向かって、なだらかに減っていきます。
| 生まれ月 | 選手の人数 | 全人口どおりなら | 比 |
|---|---|---|---|
| 4月 | 984人 | 694人 | 1.42倍 |
| 5月 | 917人 | 734人 | 1.25倍 |
| 6月 | 858人 | 705人 | 1.22倍 |
| 7月 | 843人 | 761人 | 1.11倍 |
| 8月 | 805人 | 756人 | 1.07倍 |
| 9月 | 782人 | 733人 | 1.07倍 |
| 10月 | 667人 | 722人 | 0.92倍 |
| 11月 | 619人 | 683人 | 0.91倍 |
| 12月 | 610人 | 713人 | 0.86倍 |
| 1月 | 548人 | 735人 | 0.75倍 |
| 2月 | 481人 | 659人 | 0.73倍 |
| 3月 | 491人 | 710人 | 0.69倍 |
同じ学年の中では、4月生まれは3月生まれよりほぼ1年分早く生まれています。子どものころの1年の差は体格や経験の差になり、選抜の場面で有利に働く――というのが、スポーツ科学で「相対年齢効果」と呼ばれる現象です。今回の数字も、その説明と矛盾しません。年代別に見ても同じ向きでした(1985〜95年生まれは1.17倍、1996〜2006年生まれは1.21倍)。
結果②:学年の始まりが違うイングランドでは、山が9月にずれた
もし本当に「学年の区切り」が原因なら、学年が9月に始まるイングランドでは、山も9月にずれるはずです。同じ方法で確かめました。
| 生まれ月 | 選手の人数 | 比 |
|---|---|---|
| 9月 | 747人 | 1.55倍 |
| 10月 | 635人 | 1.34倍 |
| 11月 | 551人 | 1.23倍 |
| 12月 | 503人 | 1.10倍 |
| 1月 | 567人 | 1.22倍 |
| 2月 | 471人 | 1.09倍 |
| 3月 | 464人 | 0.97倍 |
| 4月 | 386人 | 0.84倍 |
| 5月 | 386人 | 0.80倍 |
| 6月 | 306人 | 0.64倍 |
| 7月 | 313人 | 0.64倍 |
| 8月 | 299人 | 0.62倍 |
山は、日本の4月ではなく9月。いちばん少ないのは学年の最後の月の8月でした。9〜2月生まれの割合は全人口の1.26倍で、日本より偏りが大きく出ています。日本とイングランドで、山が学年の始まりに合わせて動いた格好です。
結果③:星座の偏りは、生まれ月の偏りの見かけだった
同じ選手たちを、太陽星座(誕生日で決まる12星座)と九星(生まれ年で決まる9つの星)で分けて、全人口と比べました。
- 星座:何も考えずに数えると、はっきり偏って見えます。牡牛座・双子座・牡羊座(3月下旬〜6月)が多く、山羊座・水瓶座・魚座(12月下旬〜3月)が少なくなります
- ただし、この偏りは「4〜6月生まれが多く1〜3月生まれが少ない」ことから生まれた見かけです。生まれ月は変えず、月の中の日だけをばらして星座を割り振り直すと、偏りは偶然の範囲に収まりました
- 九星:全人口と比べて、差は見られませんでした
つまり、星座で差が出たように見えても、効いていたのは星ではなく「生まれた月=学年の中での位置」でした。
正直に書いておきたいこと
- 五輪だけは差が出ませんでした(0.98倍)。五輪には冬季も含まれ、競技によって体格や年齢の影響が大きく違います。Wikidata の拾い方が粗い可能性もあり、原因は今回の調べでは分かりません
- 選手は、Wikidata に載っている人に限られます。全選手ではありません
- 日本の全人口の月別データは、1999年以前は5年ごとの年しかなく、間の年は前後の年から補いました(補い方を変えても結果は同じでした)
- 「学年の区切りが原因」とまでは、このデータだけでは断定できません。ただ、日本とイングランドで山が動いたことは、その説明とよく合います
まとめ:生まれ月の差は本物。ただし星のせいではなかった
- 日本のプロ野球・サッカー選手は、学年の前半(4〜9月)生まれが全人口の約1.2倍。4月生まれは1.4倍、3月生まれは0.7倍だった
- イングランドでは、山が学年の始まりの9月に動いた(9月生まれは1.55倍、8月生まれは0.62倍)
- 星座の偏りは、生まれ月の偏りで説明がつき、九星は差が見られなかった
占いで「生まれた時期の運」を語るとき、本当に人生に影響しているのは、星の位置ではなく学年の区切りという「社会のしくみ」かもしれません。早生まれの子どもには、体格や経験の差が出やすい時期があると知っておくことが、いちばんの収穫かもしれません。
※この記事は統計の検証結果を紹介する読み物です。個々の選手や子どもの可能性を断定するものではありません。
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