満月は出産が増える? 日本の約855万人の出生データで確かめてみた
「満月の夜は、赤ちゃんがたくさん生まれる」――昔からよく語られてきた話です。本当でしょうか。今回は、日本で10年間に生まれた約855万人の出生データを使って、実際に確かめてみました。
どうやって確かめたか
- データ:厚生労働省の人口動態統計(2015〜2024年、日本で生まれた日本人)。生まれた日ごとの人数がわかります
- 満月の日:月と太陽が地球から見てちょうど反対側に並ぶ「満月の瞬間」を含む日(日本時間)。10年間で124回ありました
- 比べ方:出生数は曜日や季節、年ごとの減少で大きく変わるので、それらをそろえたうえで「満月の日だけ、予想より多いか」を調べました
このとき、結果を見る前に「どんな結果なら効果ありとするか」を先に決めて記録してから集計しています。見たあとで基準を動かさないための手順です。
結果:満月の日に、出生数は増えていなかった
満月の日の出生数は、同じ条件の日の予想と比べて0.07%少ないだけでした。1日平均約2,300人のうち、約2人の差にあたります。誤差と言える大きさです。
| 調べた日 | 予想との差 |
|---|---|
| 満月の日 | −0.07% |
| 満月の前後1日を含む3日間 | +0.03% |
| 新月の日(比較用) | −0.10% |
| 夜(18〜5時)に生まれた人だけ、満月の日 | +0.20% |
月の満ち欠けを8つの段階に分けて調べても、どの段階も平均から±0.5%の範囲に収まりました。10年を前半と後半に分けても、結果は同じでした。
さらに、満月の日を3〜26日ずらした「偽の満月」でも同じ計算をしてみました。偽の満月でも±0.5%ほどのばらつきが出るので、本物の満月の差(−0.07%)は、その中にすっぽり入ります。
厳密に言うと
事前に決めた「効果なし」の基準は、「差の範囲が±1%以内に収まること」でした。今回の範囲は−1.2%〜+1.0%で、下側がわずかにはみ出したため、決めたルールのうえでは「効果なしとまでは言い切れない」という判定です。ただ、中心の値はほぼゼロで、仮に効果があるとしても1%前後以下の小さなものです。「満月の日は目に見えて増える」ほどの差は、ありませんでした。
助産所・自宅の出産だけ目立った…が
出生の場所別に見ると、助産所と自宅の出産だけが満月の日に+3.5%と目立ちました。ただし、この2つを合わせても1日平均16人ほどしかおらず、差の範囲は−1%〜+8%と広く、偶然で出る大きさです。たくさんの切り口で調べれば、どれか1つは目立つ結果が出ます。今回は「効果あり」とはみなしていません。
むしろ大きく効いていたのは、曜日と祝日
満月とは対照的に、同じデータではっきり出た差がありました。
| 調べた日 | 出生数(比べる日を1とした比) |
|---|---|
| 土曜 | 平日の約0.72倍(約28%少ない) |
| 日曜 | 平日の約0.62倍(約38%少ない) |
| 祝日 | 同じ曜日の約0.71倍(約29%少ない) |
| 年末年始(12/29〜1/3) | 約0.73倍(約27%少ない) |
日曜と祝日は、月の満ち欠けとは比べものにならない大きさで出生数が減っています。出産の日取りを、陣痛促進や帝王切開で医療の都合に合わせて決める「計画出産」が多いためと考えられます。しかもこの落ち込みは年々深くなっていて、日曜は2015年の約0.66倍から、2024年には約0.57倍になりました。
まとめ:「満月に増える」は、印象のほうが強い
- 10年・約855万人の出生を調べても、満月の日に出生数が増える傾向は見られなかった
- 差があるとしても1%前後以下。曜日や祝日で起きる3割・4割の差とは桁が違う
- 「満月の夜は忙しかった」という体験談は、忙しい夜が満月と重なったときだけ記憶に残るためと考えられる
月の満ち欠けは、昔から暦や暮らしの節目として親しまれてきました。出産の人数を左右するものというより、夜空を見上げて季節や自分の気持ちをふり返るきっかけとして楽しむものと言えそうです。
※この記事は統計の検証結果を紹介する読み物で、医療上の助言ではありません。出産に関することは、かかりつけの医療機関にご相談ください。
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